どこにも行けない夜

もたもたしていてチケットが取れなかったイベントのことをずっと気にしていた。まだチャンスがあるかもしれないと思って。今になって焦らなくたってあの時なら全然間に合ったのだ。今だと思った時に走れば間に合ってたかもしれない。遠い場所にいる恋人に会いたくて、部屋で悶々とする。いっそのこと、終電が出てしまえばいいと思う。もしかしたら、明日行けるかもしれないとか思っていきなり夜行バスの値段とか調べてみる。昔そんなことしたかもしれない。お金あったら。仕事休めたら。全部クリアできたら。そういう日くるかもしれない。

翌朝になって動画を見てやっぱり行きたかったと思う。免許証を忘れて入れなかったとか。どうしてもダメっすよね、ダメです、当然だ。一緒にきてる友達に申し訳ない。前日に鞄を変えたのがいけなかった。免許証を落として入れなかったとか。小雨の降る中、免許書を探し回る。もうどうでもいいって訳にいかない。一緒にきてる友達に申し訳ない。さっきコインロッカーに荷物を入れた時だ。そういう夜のことの方が覚えている。

20歳になったばかりの頃、自宅からチャリで二人乗りしてスタジオコーストまで行った。世田谷区に住んでるっていう子がスケボーで渋谷のVisionから帰って行くのを見たことがある。私は江戸川区からママチャリで新木場agehaまで向かったのだ。距離感わかってなかった。漕いでも漕いでも着かない。真夜中で車一台も走ってないあのでかい橋をチャリで渡って新木場agehaに遊びに行くことなんてもう二度とない。夏だったから、汗だくになった。成人してるからたぶん入れるけど、ダサくて入れないかもと不安だった。不安は的中した。くるのにこんなにかかった。なのに入って15分くらいで出た。自分たち、ダサすぎて中にいられなかった。喫煙所で煙草一本吸ってる間しか耐えれなかった。あの時、「火、貸して?」って言ってきてくれた人、本当にありがとうございました。私に役割みたいなものを与えてくれて、マジであの瞬間、救われた思いがしました。ここは自分たちみたいな人間の来るところじゃない、っつって、今思うとそっちの方が恥ずかしいんだけど、『電話してるフリして出よう』って言って。なんか、そうして。だって、入ったばっかりなのに出たら、エントランスの人におかしいって思われる。急用っぽいし、そうすれば格好つくから。つって。むっちゃ恥ずかしいなあ!!

「あーうん、わかった、今外でたわ。はいよー」なんて言って、入った瞬間に出た。誰も見てなかったけど。夏だったから、すでに外は明るくなってた。友達はりんかい線に乗って電車で帰った。私は自転車を引きずって家まで帰った。肝心な時に、どこにも行けない、いつも。いや、どこへでもいける、いまに。なんつって。