そんなの全部気のせいだ。

 

今日は中学時代のクラス会で、夕方になると中谷と一緒に仕事を抜けて出掛けた。半月ほど前に、クラス会を開こうかどうか、というメールを貰った時に、私はすぐに「皆が集まるなら、ぜひ参加したいです。」と返事をした。正直、とても楽しみにしていて、今日は仕事している時間が長く感じてしまった。何だか、以前の様にひねくれていた自分が嘘みたいだ。

 

 部活や、用事がある人を除いてほとんどのクラスメイトが参加したのにも驚いた。一時間経っても呼んでいるはずの担任がなかなか来なくて先に店に入ることにした。少し大人っぽくなった皆を見て、どうしてだか、どうしてだかとても嬉しくなってしまった。先生はいつになったら、いつになったら、とずっと言っていると、店の入り口から、先生が入ってくるのが見えた。1時間以上遅刻である。周りの生徒の背中を叩く先生を、少し離れたところから眺めていると、中谷が大きな声で先生を呼び、隣に座らせた。

 「先生、おっせえよ。」

 と中谷が笑いながら言うと、

「なんだお前、キャバクラ嬢か?」

 なんて、中谷は、金髪の髪と派手な服を見て言われていた。

 

久しぶりに会う先生は、前より少し痩せていて、昔よく学校で着ていた服を着ていた。先生と一緒の写真を、友人に撮って貰ったら、その友人は携帯で撮った写真を眺めながら、私と先生のことを、似てるなあ、ほら目とかが、と言った。1年生の時、数学の教師にお前等顔が似てるなあ、と言われてから、何度も何度も、似ていると言われてきた。ずっとそう言われていたい。

 先生に、最近の話や、新しい学校の話などをしてもらった。

 「先生は、いいなあ。先生は結婚してて、いいなあ。」

 と言ったら、先生はただ笑っているだけだった。それから色んな生徒のところへ行ってちょっかいを出したり、話しかけに行ったりしていた。皆で店を出ると、先生はもう帰ってしまう、と言うので、もう少しいてよ、もう少し、と皆で止めたけれど、車に乗って帰ってしまった。クラスメイトのひとりの男子が、ずいぶん遠くまで、先生!先生!と言いながら、車を追いかけていた。

 

 先生が言ってしまう前に、ああ帰るんだ、と言ったら、お前先生のことほんとに好きだからなあ、と周りに笑われた。煙草をぷかぷかと吸っている先生に、また今度、と言ったら呼ばれりゃいつでも、と答えてくれた。先生もう帰るんだなあ、先生好きなのになあ、またずっと会えないなあ、と考えていた。

 「生まれ変わったら、先生と結婚するんだ」

 「おう」

 周りで小さな笑いが起きた。生まれ変わりたいと思ったこと無いけれど、そういうことだったら生まれ変わるよ。きっと会えるだろう。先生知らないうちに結婚しちゃうから。先生の奥さんを写真で見たとき、きれいなひとだと思った。とてもきれいで、優しそうで、ついでに二人で幸せそうだった。

 先生ととても仲がよかった。でもそれも、長い時間ずっと関わってきて、仲がよかった、くらいのことなのかもしれない。今になってもっとはっきりしてきた。おかしいなあ、大人になったら、私が大人になったって、しょうがないんだった。

 

カラオケに行く、という話になって、私も参加させてもらうことにして、中谷とバイクに乗って行こうとしたら、道をよく解っていなくて、曲がる場所を見逃してしまい、ブレーキを掛けたら、ちょっと急ブレーキすぎたらしく、タイヤがロックして、すっ転んだ。

 今までに何度か滑るくらいのことはあったけれど、今年の初めにやった事故が一番大きな事故だった。だけど今回の事故は、それよりひどかったと思う。大通りで派手にバイクが倒れて、自分も飛んだ。ヘルメットが大事だってことがよく解った。後ろに車が走っていたら、大変なことになっていたと思う。急いでエンジンを掛け直して、カラオケに到着。バイクを改めて見てみると、横がバッキバキに割れて深いキズがいくつも付いていた。

 「遅くなった…。」

 と言いながらカラオケに入っていくと、

 「お前!お前どうした!?」

 と男子のひとりに驚かれた。殴り合いでもしたかのように手から血が流れ、服は擦り切れ、ジーパンは尾崎豊のモノマネみたいに破けていた。

 「パンクスだな。」

 「痛いよ…。」

 改めて自分の体を点検してみると、右手右腕、それから両足の膝がかなり痛々しい感じになっていて、そんでもって腰のあたりに青いアザ。1900円の買ったばかりのパーカーに穴が開いた…。何度も思うけれど、私は運転が下手なんだと思う。運転どうこうの前に、注意力とかその辺も欠けてると思う。あの、転ぶ瞬間、飛ぶ瞬間の「あ、やべ」っていう感じが今も残っている。このままやってればいつかバイクが粉々になっちゃうんじゃないか、そんでもって私も粉々になっちゃうんじゃないか。

 

カラオケで、鉄道オタクのクラスメイトが「テツしてきた」と言いながら、電車の写真をたくさん見せてくれた。電車を撮るのに、かなりいいカメラを使っていた。くるりの、赤い電車を一緒にうたおう、と言われたけれど、放っておいたら、「MOTOR MAN」という歌を歌いだした。すげえ歌だった…。上野上野上野上野、ああああ秋葉原、ああああ秋葉原、黄色い線の内側に、とかずっとそんな感じの歌詞で、面白いのは最初だけだ、とか言われて演奏中止にされてた。

 

www.youtube.com

 

帰り道はのろのろと、安全運転安全運転、と強く思いながら帰ってきた。これから傷を消毒して眠る。疲れた、疲れたし、体が痛い。昨晩、中学の頃の英語のノートを机の中から見つけ出し、ぱらぱらとそれをめくっていたら、殆ど新品のままのノートの、上の空いたスペースに、

 君はyou to say.

 僕はLet's to say ...yeah.

 という落書きがしてあった。優等生、劣等生、と言いたかったんだろうと思う。英語はいつも成績悪かったな…。この時すでになんか間違ってた。まだまだ、悲しむ理由なんてない。