金色の刺繍

初めて仕事をしてお金をもらったのは、中学三年生の時だった。父は都内の小さな運送会社に勤めていて、会社が廃業になるまで三十年トラックを運転した。

私は冬休みに助手として父の運転する車に乗った。父の作業着は会社の近くの作業着屋で作ったもので、胸のところに金色の刺繍で名前が入っていた。その作業着を借りて着てみると、だいぶ大きかったが、これから働いてお金をもらうんだと思うと胸のうちが輝いた。ナイロンベルトで思いきりズボンを引き上げて、朝の四時に家を出る。

暖房の効いた車内で居眠りしていると、父に起こされた。「そっちから朝日が昇るから見てろ」と。何が特別なんだと思ったけど、今でもその朝焼けを覚えている。首都高を走る車から京葉線の向こうに朝日が昇るのを見た。胸に金色の刺繍があるつもりで今も働いている。