初めて一ヶ月半のバイト先、朝行くといつも独特の匂いを感じる。すぐ慣れてわからなくなってしまうけど。埃のような、煙草のような。おばあちゃんの家でこんな匂いがした気がする。あんまりいい匂いじゃなかったけど、似たような匂いがすると思い出す。おばあちゃんは世田谷のどの駅からも遠いすごく古いアパートに住んでいた。玄関の前は植木鉢だらけで、猫が何匹かいた。もう二十年くらい前のことだけど。

前のバイト先はいい匂いだった。真冬にガソリンの匂いを嗅ぐとなんかドキドキしたもんだ。びしょ濡れになったりズタボロになったりして、キャップ被ってつなぎ着て、全部の鍵を腰につけて、誇らしいような気分になる事もあったような気がする。

楽しみにしていたアルバムがやっと聞ける。秋に公開ってどれだけ先なんだと思った映画が公開される。十年後にまた会おうと言って十年経つ。子供は小学校に入る。寝たら速攻で朝。一日は長いのに。一瞬でお別れ。たちまち老ける。そうしたらもう戻らない。二度と会えなくて寂しいのが一番だ。その気になればどうにでもなると思いながら。