井戸から自力で這い上がる

バンコク旅行ではほとんどホテルで寝ていた。体調が悪くて。そもそもなんとなく飛行機に乗るまえから怖かった。こんなことはこれまでなかったことだけど。携帯を機内モードにする前に万が一の事があったらドロップボックスで同期にしてあるファイルを見てくれと部屋に書置きしてきたそのメモを書き残す。何度も言うけどこんな事思ったのもしたのも初めてだ。自分の座席のシートベルトのねじれが根本的に直せない構造になっていていよいよ怖い。気を紛らわせようと機内でデイミアン・チャゼル監督のファーストマンを観た。この映画をこのタイミングで見るのは完全に駄目だった。しかし機内食は完食したので大した事ではなかったのか。ビールを飲んで少し頭を麻痺させる。続けてボヘミアン・ラプソディーを見て、いい映画だったが感情がめちゃくちゃになった。どうにかバンコクに無事ついた。

以前おそらく食あたりで死ぬかとのたうち回ったこともあるが、今回の体調不良は目眩のようなものが長く続く。どうせ予定も立てずにきたので、ほとんど出かけずに寝ていた。悪い癖だが外国に行っていい気になって煙草を買って吸ってしまう。何年か前これで完全に禁煙に失敗している。二月ぐらいに一本吸ってからからまた煙草がなんとなく吸いたい。実は時々吸っているが、まだ大丈夫だと思っている。何本か吸ってホテルのエントランスにいた日本人に残りをあげた。禁煙したいのだ、私は。絶対またそう思うに決まっている。体調もほとんど良くなって、帰りはもう怖くなかった。

 

久しぶりに彼氏と会った。関係がどんどん変わっていく。私も別人みたいに変わっていくな。話題になっている映画、岬の兄妹を見にいく。映画の内容とは違うけど、いろんな人と立ち替わり入れ替わりセックスするシーンを見るのがキツイ。岬の兄妹でそういう場面がすごく多かったというわけではないのだけど。チワワちゃんでもそういうシーンがあり、あ、ダメだなと思った。殴られたりするのもダメだ。怖いと言うほうがいいかもしれない。汗がにじむような感じがするから。気配の時点ですでにキツイ。昔、テレクラキャノンボール2013の劇場版じゃないやつを(10時間)マクドナルド買ってきてコーラ飲みながら見てたけど、その頃よりもっと強く、今ダメだと思ってしまう。2020年、テレクラキャノンボールが公開されて、それを見たらどう思うだろかと、今から考えたりする。歳か?別人みたいに変わっていくからな。

 

映画が終わったあと橋口亮輔監督の映画に出ている俳優さんを見かける。普通の人よりもくっきりしていてすぐにわかる。こういうことをするのはよくないか、と悩み、一旦外へ出て人混みに紛れ、もう一度見かけたら…と思いながら歩き出したら、外でもう一度見かけたので、勇気を振り絞って、(まさに振り絞った)お声をかけさせていただいた。少しだけお話ししてくださった。スボンの裾で手をはらってから握手してくれるその仕草、めっちゃくちゃかっこよくてぐっときた。一日中、浮かれた気分でいた。あの映画を初めて見たとき、最初の場面から涙が止まらなかった。いいとか悪いとかじゃなくて自分の映画だったのだ。

 

浮かれすぎたせいかベロベロに酔っ払う。自分が明るい気持ちでいると周りの人は親切だ。バーニングのこと今もずっと話している。劇中でヘミが披露するリトルハンガーとグレートハンガーのダンスを踊って見せると(ダサいけど、映画の中ではこれがめっちゃいい)彼氏はいい加減にせえよ、とたしなめてくる。退屈?ベンじゃん!!僕は時々、杉並区のゴミ捨て場に火をつけるんです…ククク…(嘘ですもちろん)死んじゃうのは寂しいから、最初からいなかったみたいに消えちゃいたいの。

朝起きると最悪の気分になってた。憂鬱はアルコールの代謝のせいでもあるのはわかってる。でも主に調子に乗りすぎた罪悪感で。夜に煙草何本も吸った。もう禁煙もここまでだ。バーでバイトしてた時は、よく昨晩の自分みたいな女をシラフで眺めて楽しんでいた。あー楽しそうだなあ、みっともねえなあ、と思って。まさにそれだ。一人で家でやってるなら別にいい、外に出てやりたくない。やるべきじゃない。またチャンピックス飲んで禁煙するだろう…。